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「あれ…?」
やがて霧が薄れ、遂に鬼神様が現れて来ると思いきや、どうやら私は山から抜けたらしい。
その証拠として、白霧山を越えた所にある隣村が遠くに見える。
運が良いと言えるのか、悪いと言えるのか。
普通の人なら迷わず前者を選んだだろうが、普通の人とは違う彼女が選んだのは後者の方だった。
居場所の無い彼女は隣村で生活する事も考えたが、何処へ行こうと扱いは変わらないと確信していた。
「もう一度入ったら今度こそ会えるかな…」
こんな事ならいっそ鬼神様に食された方がマシだと考えていたのだ。
しかし、そう思う反面、心の何処かで自分らしく生きられる居場所を欲しているのもまた確かな事で。
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