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来た道を戻ると最初の時のような濃い霧に包まれる事は無かったけれど歩いて数分、男性の声が森に響いた。
風に乗りふわりと耳に届いてきたそれは、低く妖艶さを秘めた美しさに加えどこか威厳を感じる重みのある声色であった。
「どうした娘、忘れ物か?」
目の前に、ぼうっと炎が現れ瞬きをした瞬間それは男性に変化した。
2つの角が生えた、一瞬恐怖を感じてしまう形相の鬼の面を付けているその男は見ただけで分かる程、良質で立派な着物を身に纏っていて。
凛とした姿から伝わる神秘的且つ豪い雰囲気は、この男が紛れもなく鬼神であるという事を強く強調していた。
確信して居ながらも本人の口から肯定されなければ何だか腑に落ちないものがあった彼女は、その男に問うた。
「あなたは鬼神様?」
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