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「毎年のように寄越された娘を隣村に逃がす身にもなってみろ。俺はただ静かに暮らして居たいだけだ、生贄など要らぬ」
今まで生贄として死んでいったはずの村人は鬼神本人によって逃がされ生かされて居たのだ。
私が霧に導かれたように隣村へ誘導した、今も昔もずっとそうだった。
鬼神様は誰も食してなど居なかったのだ。
村人達は鬼神様はとても怖い神様だと、怒りを買うと命はないと、冷酷非道だと言っていたのに。
「俺の事を誰がどう思おうが勝手だが、生贄などという命を無駄にする行為は解せんな」
誰だって自分が一番可愛くて、いくら素晴らしい人だとしても自分の命を守る事を優先してしまうものだろう。
あの様な事を聞くと、やはり鬼とて立派な神様なのだと感心してしまう。
「神が人間を食すなど有り得ない、悪いがお前の望みは叶えてやれん」
「帰れ」と突き放されたけれど私は諦めなかった。
隣村で過ごしてまた同じような目に遭うのならば殺された方がマシだからだ、了承して貰えるようにどうにかして粘ってみる。
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