第一幕 : 表と裏

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忌み子である事を理解している彼女は自分は此の世に必要の無い者だとずっと思って来たのだ。 望まれて生まれて来たわけでも無い上に、人間には決して無い不思議な力が宿っていた。 それを村人は陰で恐れ、そして利用したのである。 何としてでも了承して貰う為に仕方なく彼女は全ての出来事を正直に鬼神に話した。 目を見て、時に相槌を打ちながら、彼は静かにそれを聞いていた。 「そうか、お前は仙果(せんか)の娘なのだな。だから桃の良い香りがする」 「仙果の娘?」 「稀にいるのだ、此の世に生まれる際に人の子に妙な力が宿る時が。それは素晴らしい万能薬になるとも言われているが、あくまでも伝承だ」 数万年に一度、仙果という強力な力を持って生まれる人の子が居るという。 仙果とは桃の異名であり仙桃(せんとう)とも言われる。
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