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きっかけを
「おかしなものが見えてる?いいのよ、見えたものを教えて」
彼女はそう言って笑った。くそ、笑った顔も可愛いなんて。美人は笑うと崩れることがあるが、彼女は笑うとそれはそれで可愛らしい。まったく、なんてことだ。彼女はお見通しってわけか。
「ああ、さっきからちょっとおかしいんだ。教室が水の中になったり、突風が吹いたり、小人が出てきたり。今はユニコーンが駆けていった」
俺は自分が見たとおりのことを報告した。
「へえ。君は水と風と小人とユニコーンか。人によって、微妙に見えるものが違うみたいなんだよね」
「違うって…。君が見せている幻なのか?」
「うーん、説明が難しいんだけど…。私はきっかけを作ってるだけ。見えるものは人によって微妙に違うの。例えば、このヘッドフォンは何に見える?」
そう言って、彼女は耳についたヘッドフォンを指さす。指が長くて綺麗だ。
「ヘッドホンに風車がついているように見える」
「風車ね。戦車に見える人もいるみたい。戦車から弾が発射されて教室中で爆発が起こるらしいよ」
そう言ってまた笑うんだ、彼女は。
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