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「君は何者なんだ?催眠術師なのか?」
「おお。よく聞いてくれたね。まあ、そういうものだと思ってくれていいよ。うちはイリュージョニストとか手品師とか、幻術師とか霊媒師とか、そういうのが多い家系。私は将来をまだ決めてないけど、多分人に幻を見せる職業につくんだと思う。今は、その訓練中」
「すごいな。訓練して人に幻を見せることができるなんて!とても素敵じゃないか」
「へえ、ほめてくれるんだね。気持ち悪いって毛嫌いする人も多いんだよ、嘘を見せるな、とか詐欺師だ、とかね。悪く言われることも多い。だから、なるべく美しく、そして神秘的に見えるように心がけているの」
そう言って笑う彼女。
ふと、窓からの風がやんだ。すると、彼女の顔がいつもと違うように見えた。普通に見えたのだ、よくいる高校生のように。いつもより地味に、いつもより小柄に、いつもより親しみやすく見えた。
「そうか。神秘的に見せるのも、才色兼備に見せるのにも努力が必要なんだな」
「うん。家族から期待されるのも面倒なもんだよ。教室中の人間くらい幻にかけられないようでは落ちこぼれだ!とか言われるからね。常に気を張ってる」
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