極めて小さい

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極めて小さい

放課後の教室は何事もなかったかのようにたたずんでいる。 遠くの音楽室から吹奏楽部の練習音が聞こえてきた。曲は、ハチャトゥリアンの『バラの乙女たちの踊り』だ。この華やかで軽やかな曲も彼女のイメージにぴったりだ。 彼女まであと5歩の距離となったところで、今度は彼女を囲む7つの机から7人の小人が出てきた。なぜ机の中に小人がいるんだ? 小人は身長10センチぐらいだろうか。極めて小さい。ディズニーの小人のような可愛らしさはない。職人のような恰好をしたおっさんの小人達がいっせいに俺に向けて槍を突き出してくる。 小人達はかなり怒ったような表情をしている。彼女は、小人に驚く俺を見て、心なしか笑っているように見える。これも彼女が見せている幻覚か? 「幻埼さん、待ってて。ちょっと今、おかしなことが起きているんだが、俺は向かうから」 ああ、何を言っているんだ俺は。 俺は小人に向かって必死にジェスチャーした。俺は敵ではない。俺は武器を持っていない。両手をあげて抵抗しない姿勢を示したよ。彼女を守るガーディアンには敬意を払わないとな。 小人達は槍を俺に向けてじりじりと近づいてきた。そして、7人で一斉に俺のことを槍で刺した! やられたのか俺は? とっさに目をつぶったが、何も感触がない。気がつくと、小人の姿は消えていた。教室の片隅で両手をあげている俺の間抜けさよ!
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