55人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、西くん」
再びリビングの扉から妻が顔を出す。
パックも髪のセットも終わって、最低限の身なりを整えている。
「おじゃましてます」
西が一向に手をつける気のないビールを開け、黙って飲み始める。
やっぱりぬるい。
冷蔵庫を開けてみたが、どうやらこれで最後らしい。
「あら、味どうだった? 炊き込みご飯」
「すごい美味しかったよ、さすがマコちゃんだね」
「ふふ、嬉しい! そういうの、かっちゃん絶対言ってくれないから」
「西、もうビールねぇや」
妻と西の会話に割って入ると、妻が呆れた顔をする。
「あんまり飲んで、また西くんに迷惑かけないでよ?」
「はは、大丈夫だよマコちゃん。かっちゃんは俺が責任持って介抱するし。かっちゃん、ワインとか日本酒でいいなら俺ん家にあるけど、どうする?」
酒があるなら行かない選択はない。
あぁ、風呂に入るタイミングを逃したな。
「ごめんね西くん、こんな旦那で。かっちゃんも西くん家に行くなら、吐いたりしないでよ?」
「ん、あぁ」
テレビからは笑い声が聞こえる。
録画していたドラマがいつの間にか終わって、バラエティ番組が始まっていた。
_
最初のコメントを投稿しよう!