アヤ

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リビングに戻ると、妻は録画していた【夏と恋】の第1話を見返していた。 『アヤ…俺と付き合ってくれ』 『もちろんよ、ユウスケ』 アヤ役の少しぎこちない演技が懐かしい。 恋人想いの理想的な女性として描かれたアヤは、この後、親友のナツコにユウスケを奪われる。 確か、決定的だったのは第3話で、ユウスケがナツコの家に押しかけて一線を越えた時だろう。 体の関係から、一気にユウスケはナツコに落ちた。 「ほんっと、ユウスケってサイテーな男だよな」 西も食い入るようにテレビ画面を見る。 俺はそこまでユウスケ役を嫌いになれないが、アヤ役が少し可哀想かと思う。 「でも、ユウスケって、きっとアヤにも未練があるのよ。昨日の10話で別れ話を切り出した時、結局ユウスケはアヤと別れなかったでしょう?」 そんな展開だったのかと、先にネタバレを聞いてしまってモヤモヤする。 「俺だったら絶対にアヤを取るよ。こんな理想的な女を放っておいて、体の相性がいいナツコの方に転ぶなんてバカ男だろ」 「体の相性も、大事だと思うけどなぁ…」 心の声が出ていたらしく、西にケツを思いっきり叩かれた。 「っ、いってぇ、アホ!」 「アホはどっちだ、バカ香月」 いきなり名前で呼ばれてうろたえる。 大抵、西は2人きりの時しか俺を名前で呼ばない。 普段は周りに合わせて「かっちゃん」と呼んでくる。 「西さぁ、ケツ叩くのはいいけど、もうちょい加減ってものを…」 叩かれ慣れてしまったケツを労わり、リビングを出て玄関に向かう。 _
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