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「かっちゃーん。セブンにロールケーキなかった~」
コンビニの袋がモニターいっぱいに映る。
すぐさま玄関に向かい、ロックを外す。
「よっす。あれ、かっちゃんまだスーツなの?」
「あ? あー」
西に言われて気付いた。
ビールとドラマに気を取られてスーツを着たままだった。
ふわっと西から香る、シャンプーの匂い。
会社とは違って香水の匂いがしない。
「おじゃましまーす。マコちゃんは? もう寝てる?」
「いや、パック中」
「そっか。もうちょい早けりゃ貴重なセクシーシーンが見れたなぁ」
「アホ。人の嫁を邪な目で見るな」
「見てないよ~」
冗談に決まってる、と西は笑いながらリビングへ向かう。
「なんだ、夕飯も食べてないの?」
「あぁ」
テーブルの上に置かれた手付かずの夕飯を見て、西が顔をしかめる。
「せっかくマコちゃんが作ったのに、ここの旦那ときたら…」
「だってキノコ入ってんじゃん」
キノコ嫌いの夫になんとか食べさせようと、毎日何かしらにキノコを紛れさせている。
今日は大胆にも、舞茸の炊き込みご飯になめこ汁、メインディッシュは鮭とシメジのホイル焼き。
「相変わらず愛されてるなぁ、かっちゃん…」
「キノコ愛ならお前にくれてやる」
冷蔵庫から冷えたビールを2本取り出し、テーブルに置く。
西は美味しそうに炊き込みご飯を頬張っている。
「まじ天才。俺の母さんと同じ味」
「それって美味いの?」
「美味いに決まってるだろ、もっとマコちゃん大事にしてやれよー」
「キノコは勘弁だわ」
握りしめていたテレビのリモコンを思い出し、コマ送りしていたドラマを再生する。
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