55人が本棚に入れています
本棚に追加
『あたしたち、親友よアヤ』
『もちろん、どんなことがあっても私はナツコを恨まないわ』
かなりシーンが飛んだらしく、話がいまいち繋がらない。
一旦停止しようと思ったが、面倒になってやめた。
「うわ、これ神回のやつでしょ? ナツコのキスシーンと泥沼展開」
「そうなのか?まだ初見だから…」
「あー、じゃあアヤのアレも見てないか」
西はなめこ汁をすすりながら、鮭のホイル焼きに手を伸ばす。
ほろ酔い状態になってきた俺は、本日3本目のビールを開け、西の買ってきたつまみを漁った。
「確かこの後な、アヤが窓から見てるんだよ。ユウスケとナツコがキスしてんのを。あっ、セブンじゃなくてローソンのロールケーキ買ってきた」
噂のシーンはまだ先だったのかと、西の口に入るキノコを見ながら思う。
なんだか腹が減ってきた。
「コンビニのロールケーキってさ、元はと言えばローソンで大ヒットしたんだよな。なんでセブンがいいの?」
「あ?あぁ…別に。近いから」
「単純かよ。絶対ローソンのが美味いじゃん」
ロールケーキに対するこだわりは特に無いのだが。
「まぁ、パクってなんぼの世界だし。後出しでもそうやって選んでくれる人がいるから儲かるんだろうな」
西はビールに目をくれず、キノコを消費し続ける。
「ビール、ぬるくなるぞ」
「あ、だな。俺さ、飯と酒 一緒に食えねーのよ」
そう言って、残った鮭を箸でつまんで俺に寄越してくる。
「ほら、キノコ以外は食えるだろ?せっかくの料理なんだから、な?」
しぶしぶ、無言で鮭を口に入れる。
シメジの味がする。
ビールで一気に流し込み、独特なその味を上書きした。
_
最初のコメントを投稿しよう!