第8話 ギャンブル好きな男

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「え? あ、ああ……。むしゃくしゃしてしまうと、つい……」  まずは軽く言い当てて、信用を積み上げていく。 「時々は勝っているようですが、トータルしたら大きく負けています。ストレス発散も大事かもしれませんが、他の趣味に回した方が良さそうですね」 「確かに……、その通りですね」  同意はしたが、この男がギャンブルを止めるわけがない。  だが、そんなことはどうでも良い。これも、信用を高めるための種まきだ。  そして、そろそろこちらの思惑に誘導を始める。  まずは普通の話術で揺さぶり。工場の経営者ともなれば、恨みを買いそうな出来事の一つや二つ、遭遇しない方がおかしいので、その辺りから……。 「工場の経営不振に関してなんですが……。あなたは誰かに、恨みを買うようなことをしましたね?」 「…………」  ――えっ?  思わず疑う、男の記憶。  ただの揺さぶりの言葉に、予定外の大物が釣れた。  男の記憶の中にいる、見覚えのある人物。唯子の父親に間違いない。  降って湧いたチャンスの到来。水野江にもつながる可能性は大だ。  一つ大きく息を吐き、気持ちを切り替える。 「ど、どうも、その恨みが影響しているようです」  こっちが慌ててどうする。  いつも通り、冷静に、慎重に……そして大胆に。     
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