第1話 占わない男

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 語り始めた武勇伝とは裏腹に見えてきた、この男の言う苦労。  差し押さえられていく工場の機械を前に、必死に懇願してくる人たち。その目には絶望と哀しみが浮かぶ。しかし、すがるその手を容赦なく振り払う。  中には追い詰められた者もいたらしく、参列したお通夜では怒りと憎しみの目が向けられる。掴みかかる遺族。割って入る付き人。懐から取り出した香典を、恵んでやるかのように放り投げる。  なんだ、相当なあくどさじゃないか。  さらに深く探りを入れるために、再び言葉を掛ける。 「なるほど、結構な財産を築き上げたようですね」 「いやいや、それほどでもない。会社第一だからな、私財なんて――」  さらに見えてくる、言葉とは大違いの現実の記憶。  風変わりな方法で開けられた隠し金庫の中には金、金、金。  社長室には美術品が飾られ、食事も贅沢三昧。  夜には、女遊びも盛んな金満生活。  弱者から搾取し、私腹を肥やす典型。  なるほど、これがこの男の生き様か。見事なまでの鬼畜ぶりだ。  さて、アドバイスに充分な記憶は覗き見た。端的に回答を述べる。 「やめられた方が良いでしょう」 「そうか。まあ、海外進出はリスクが高すぎるかもしれんな……」 「いえ、そういう意味ではありませんよ」     
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