第1話 占わない男

4/6
前へ
/80ページ
次へ
「ん? じゃあ、どういう意味だね」 「社長の座も譲られて、仕事をお辞めになられた方が良いということです」  鬼の形相で勢い良く立ち上がる男。腰掛けていた椅子も、音を立てて倒れる。  そして間髪入れずにぶちまけてくる、怒りの言葉。 「引退しろだと!? ふざけるな。わしの野望は、まだまだこれからだ。貴様のような若造に言われたくはないわ!」  若造か……、それは認めよう。何しろまだ二十一歳だ。  だが、そんな恫喝で引き下がるつもりはない。 「若造の言葉だからって軽くみると、きっと後悔しますよ」 「なめた口を叩きおって。貴様にわしの何がわかるというんだ!」  ずっと見下ろされていたが、そろそろ辛抱も限界。  こちらもおもむろに立ち上がると、今度は逆に男を見下ろす。  そして顔を近づけ、威圧的にゆっくりと始める根拠の説明。 「だから、言ったでしょう? あなたの過去を見ますよ、と。あなたはこれまでに、随分とあくどいことをやってきたようだ」 「な、何を証拠に、そんなふざけたことを……」 「随分と搾り取ってきたんでしょう? それも、一回や二回じゃなさそうですしね。とことんまで追い詰められてしまった人もいたようだ。きっと、恨んでるでしょうね」     
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加