第7話 支配する男

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 差し出した偽物の名刺を受け取った社長は、ざっと社内を案内すると、応接室へと招き入れた。 「どんな取材なんですかね?」 「町工場の現状のレポート記事です」 「なるほど……」  さっきは、ストレートに質問をぶつけすぎて失敗した。  今回は慎重に、水野江の名前を出すのも様子をみてからにしよう。  だがサングラスは外し、いつでも目を合わせられる準備は怠らない。   「まずは、会社設立の辺りからお話を――」  雑誌の取材がどんな手順で行われるかなど、わかりはしない。  それっぽく見せるために、普段から持ち歩いているボイスレコーダーをテーブルに置く。録音しているように見せるが、スイッチは入れていない。電池がもったいない。  そして、メモを取ってみせながら、適当な質問を並べたてる。  水野江の話に誘導できそうな回答待ちだ。  機をうかがう。 「――次に、町工場ならではのご苦労などお聞かせ願いますか?」 「そうですねえ……。やはり、景気の煽りをもろに食らうところでしょうね。私どものような下請けは、元請けがよろめいただけで簡単に転びますからね」  この回答なら『水野江工業』の言葉を出しても不自然ではないだろう。  さっそく社長の目を見て、質問を切り出す。 「この辺りで元請けって言いますと、水野江工業さんあたりですかね?」     
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