第7話 支配する男

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「ええ、水野江さんには頭が上がりませんよ。うちは、あそこでもってるようなもんですから」  やはりか。  社長の穏やかな表情とは裏腹に、厳しい現実が飛び込んでくる。  辞表を提出する従業員、それを引き留める姿。  水野江工業の名前を出してそれが見えたということは、何か関連があるのだろう。  嫌がらせに耐え切れなくなったのか、それとも引き抜きか……。  そして、土下座までして水野江を見上げる姿。  さらにそれを虫けら扱いで見下す、水野江の憎らしい表情。  この社長もまた、水野江に煮え湯を飲まされているのは明らかだ。  さっきほどではないが、やや直接的に探りを入れてみる。 「そんなご関係ですと、無茶とか言われませんか?」 「何を聞き出したいのかわかりませんが、親切にしてくれてますよ。良好な関係を保ってますね」  一瞬顔をひきつらせたように見えたが、すぐに穏やかさを取り戻す。  この分では、ここでも水野江の悪行を聞き出すのは困難そうだ。 「今日は急な取材にもかかわらず、ありがとうございました。紙面の都合上掲載できるかはお約束できないですが、もしも掲載の際には一冊お送りさせていただきます」 「楽しみに待ってますよ」  永遠に雑誌など発刊されはしない。  あらかじめの言い訳をして、工場を後にした。     
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