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一気に脅かして、揺さぶってやる。
「川上さんに恨まれてますよ、あなた」
――ガタッ!
突然立ち上がる男。
真っ青な顔色。
小刻みに震える身体。
何か言葉を発しようとしている、半開きの口。
しかしそれも、息が漏れるばかりで声にならない様子。
「落ち着いて。まずは、お座りください」
「い、いや……。しかし……」
男は座り直したものの、相変わらず顔色は優れず、目も虚ろだ。
男の記憶の中に『川上唯子の父親』がいたから、鎌をかけて名前を出してみたのだが、これほどまでの動揺ぶりは尋常じゃない。付け入れそうな、何かがありそうだ。
となれば、攻めの一手。さらに言葉を畳み掛ける。
「もう他界している人物の恨みが原因とか、信じられませんか?」
ダメ押しの一言は、男に再び動揺をもたらす。
真っ青な顔はさらに覇気をなくし、もはや死者の顔色。
拝むように、必死に合わせる両手。
そしてそのまま頭を下げて、テーブルにひれ伏す。
折り畳みのテーブルは、小道具を並べるため貧弱なもの。
壊れないかと不安になりつつ、倒れないように慌てて両手で押さえつけた。
「俺が悪かった。許してくれ……。許してくれ……」
ひたすらに男は謝罪を繰り返す。
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