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占いにすがる者は、霊的なメッセージを真に受けやすい。もちろん、信頼を得た上での話だ。そのための序盤の種まきは、どうやら実を結んだらしい。
それにしても、こんな言葉を信じるとは。
唯子の父親が、死んだ後もこの男を恨むような人物なら、それを利用する俺はこの場で祟られてしまいそうだ。
「まあ、まずは落ち着きましょう」
「はい……。すみません」
「正直言いまして、川上さんの恨みが経営にどう影響しているかは、この場ではわかりかねます。日を改めて、その工場にでもお邪魔した方がいいかと思うのですが、どうでしょう?」
「はい、お願いします。連絡はこちらに……」
そう言って、男は震える手で名刺を差し出す。
この場で終わらせてしまうには、もったいないネタだ。
単純に儲け話を思いついたのもあるが、この男には聞きたいことが山ほどある。
唯子の父親との関係、水野江との関係、そしてあわよくば唯子の父親と水野江との関係も何か知っているかもしれない。
「小沢さん……ですか。それでは近いうちにご連絡を差し上げますので、数日お待ちください。もちろん、ギャンブルに手を出しちゃダメですよ」
気遣いの言葉を掛け、小沢を見送る。
背中を丸め、足取りも重く帰っていく小沢。しばらくの間は、気が晴れることもないだろう。
さて、また面白くなってきた。
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