12人が本棚に入れています
本棚に追加
第2話 絡まれる女
「――ああ、身体中が痛い……」
晴れ渡った青空に向かってひと伸び。
サングラス越しにも太陽の眩しさが目に突き刺さる。
身体を戻すと、正面に見えるのは夕べ降り立ったばかりの凪ヶ原駅。
ビルが乱立するほどの都会ではなく、かといって風光明媚な観光地を売り文句にするような土地柄でもない。
なので駅周辺にもホテルはなく、一夜を明かす場所として選択したのは駅前のネットカフェ。その狭い部屋の一室で、身体を折りたたむように仮眠を取った結果が、この身体中の軋みだ。
腰を落ち着けるからには、まず部屋探しか……。
いや、でもその前に腹ごしらえか……。
「おい! 待てって言ってんだよ!」
「逃げんなよ! コラ!」
怒鳴り声に思わず振り返ると、目の前に迫る髪の長い女。
すでに避けられる距離ではない。
「きゃっ!」
女は後ろを向きながらこちらへ突っ込んできたが、抱き止めて難を逃れた。しかし、その拍子にサングラスがはじけ飛ぶ。
そして驚いて振り返った女と、つい、見つめ合う体勢に。『この女もか……』そんな言葉が頭をかすめたが、今はそれどころではなかった。
「なあ、邪魔しないでくんねえ? 俺ら、その女に用があんだけど」
最初のコメントを投稿しよう!