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キスする私
私の朝は、サイドテーブルでけたたましく鳴り狂う目覚ましを叩き落とすことから始まる。気だるい体に鞭打って鏡の前に立てば、爆発している髪にため息が出た。
――乾かし途中で寝ちゃったからなぁ。
手櫛くらいじゃどうにもならない。どうせシャワーに入るのだからと割り切って、サッとまとめてシュシュを巻く。それから、居間でおやすみ中の彼にまたがり耳元で囁いた。
「おはよ」
寝起きすぐは適度な舌ったらず具合で、我ながら甘ったるい声だ。これを吐息のかかる距離でお見舞いすれば、大抵の男はフォーリンラブるところだけれど、眠れる私の王子様はそんなことじゃあ動じない。
ちぅ、といつものようにキスをする。朝一番は長めに、何度でも。それこそ「おまえ、前世キツツキだったんじゃね?」と言われんばかり機械的についばみ続ける。
そしてやっと目覚めた彼は、私に馬乗られている状況にも関わらず、ケロリとこう言うのだ。
「おはようございます、お嬢様。今朝はいかがなさいますか?」
そろそろ何かしらの反応が返らないものかと思うが、そこはまぁ、頭の固い執事を選んだのだから仕方ない。
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