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 赤黒い弾が飛んできて、タロウは反射的に目を瞑った。  まつ毛のあたりに生温かい感触がして、それを指で拭えば、中指がぬるりと滑る。 「やべ、ついちゃった」  指をこすり合わせたら、余計に血が広がった。 「ああ、もうっ」  苛立ちを素直に声にする。取れにくいんだよな、これ。  数メートル向こう側では、男の体が糸の切れたマリオネットみたいに崩れ落ちた。そしてそのまま、岩のように動かなくなった。  右手に持ったサイレンサー付きの銃を懐ろにしまうと、タロウは男に近付いていった。履いているブーツの底が厚いせいで、仕立ての良い絨毯が歩くたびに鈍い悲鳴を上げる。  屈んで男の顔を覗くと、タロウはフクロウのように目をおっ広げて様子を窺った。禿げ上がった額には風穴が空いていて、目は驚いた形のまま黒く濁っている。  自分のパンツのポケットから、スマートフォンを取り出した。カメラ機能を立ち上げて、レンズを死体へ向ける。様々なアングルで何枚か撮影して、メールに添付した。メールアドレスを素早く手打ちで入力すると、〈送信〉を押す。  数秒経ってから着信して、タロウはすぐさま応答した。
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