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『よお。おつかれさん』 「うん。どう? 大丈夫?」 『相変わらずばっちりよ。間違いなくシラミネだ』 「これ、シラミネっていうんだ」 『お前なあ、名前くらい頭に入れとけよ。殺す相手間違えたらどうすんだ』 「うるせえな。俺は顔で覚える派なの」  言いながらタロウは、ポケットからフリスクを取り出した。蓋をスライドさせると、ほんの数分前に唾を飛ばしながら命乞いをしていた男の顔写真が出てくる。  そういえば、あの唾が服にかかっているかもしれない。パーカーの裾をつまんで、タロウはげんなりとした。 『金、用意してあるから。今から来るだろ?』 「一回うちに帰る。服着替えたい」 『あ? めずらしいな。血浴びたのか?』 「違うよ。唾」 『は?』 「とにかく、あと三十分くらい待ってて。すぐ行く」  相手の答えは待たずに、電話を切った。死体をひょいと跨ぐと、豪華に装飾されたホテルの部屋をあとにした。
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