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「タロウくん、ご飯食べた?」
「ううん、まだ」
「肉じゃが作ったんだけど、食べる?」
「ほんとに? 食べる食べる。俺、肉じゃが大好き」
そう答えれば、ハナは心底うれしそうに笑う。
ご飯をもらって得をするのはこちらなのに。ハナはいつも、こうやって笑う。タロウはそれを、いつも不思議に思っていた。
「じゃあ、タッパーに詰めてから、あとで持っていくね」
「ありがと。――あ、でも俺、すぐに出掛けるから」
「えっ、また出掛けるの? もう夜だよ?」
「俺の上司、人遣い荒いの」
「そっか。わかった。すぐ行くね」
ポニーテールを翻して、ハナは家の中へと戻った。けたたましい音で、玄関のドアが閉まる。
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