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「なんか、ばたばたしてた? 大丈夫?」
「別にばたばたなんてしてないよ? ハナちゃんじゃないんだから」
「えっ、私ばたばたしてる?」
「さっきすごいどたばたしてた」
「ウソだあ」
ハナは、グーを作った手で口元を隠して笑った。照れた時の、ハナの癖だ。鼻は、トナカイみたいに真っ赤だった。
寒いだろうと、細い手首を引いて家の中へ招き入れれば、ハナはみるみるうちに耳まで真っ赤にした。
「あ、あっ、これっ。肉じゃが」
「わー。ありがとう。美味そう」
「足りるかな?」
「うん。ハナちゃんが作ったの?」
「そうだよ」
「へえ。ハナちゃん、いいお嫁さんになりそうだね」
何の気なしに、そんなことを言った。ハナの反応がなかったので、タロウは肉じゃがに向けていた神経をハナに向けた。
ハナは、茹であがったタコみたいに、すべてが真っ赤だった。
「怒ったの?」
「ううん。怒ってないよ」
「そう?」
「あのさっ、タロウくん」
「ん?」
訊き返したのに、なぜかハナは黙り込んだ。俯いて、目をあちこち泳がせている。
タロウが再び、なに? と訊ねると、やがて思い切ったように顔を上げた。
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