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空港に着くと、タロウはサトウの姿を探した。
サトウは、空港ラウンジの隅の方で、背中をまるめて座っていた。
それを見て、タロウは心のどこかでほっとした。
今だけではない。一緒に行くんだと言われたあの時、恐怖と共に安堵も感じた。いや、もしかしたら、安堵の方が大きかったかもしれない。
サトウに甘えていたかった。結局自分は、まだ子どもなのだ。
近付いていくと、サトウはぼんやりと手元を見ていた。
手の中には、随分昔に撮ったのか、派手な髪色の頭を寄せ合ったサトウとユミの写真があった。
タロウは大きく咳払いをした。
サトウが写真を胸元にしまうのを見届けてから、彼に近付いて隣に座った。
「おう。ちゃんと来たな」
「……うん」
「あれは? 持ってきたか?」
紙袋を、サトウの足元に置いた。
紙袋が無駄に大きいことを訝しんだのか、サトウは眉をしかめて中を覗いた。そして、げっ、と顔を歪めて、すぐにタオルを元に戻した。
「なんだよ、この金」
「俺の全財産」
「お前な、世の中には銀行という便利な機関があって」
「行くの面倒くさい」
「めんど……お前なあ」
「でも」にやっと笑って、タロウは言った。「便利でしょ? 手元にあった方が。こういうとき」
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