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第一話 異世界《ミッドガルニア》は突然に 02
「じゃーん! どうよ、これ!」
雨の中、波止場まで連れていかれて、茂がこれ見よがしに差し出した右手の先に、一隻の真新しい小型漁船があった。船首には『日摘丸』とデカデカと船名が書かれている。
「……もしかして、これって」
「そう、俺の船。やっとオーバーホールも終わって、漁船登録も完了してね。で、処女航海でここまで試し乗りしてきた訳だよ。長かったな、ここまでくるのは……」
茂は自分の船をまじまじと見つめては、その瞳にうっすらと涙が浮かんでいる。
茂が移住した理由は漁師になりたかったからだ。そこへ、定住支援制度と漁業研修制度を利用して、飛芽島にやってきたのである。
漁業研修先はヒヨリの親戚の家だったこともあり、その縁で家族ぐるみの付き合いをしていた。
暫くは親戚の元で研修を頑張り、つい最近、合格(独立)が許された。そして自分の船を入手したのである。
「うわー、新しい船って良いですね。おじさんの船は年季が入っていて所々が汚れているから、より良く見える」
ヒヨリも幼い頃から漁船に馴染みがあり、それと“古く深い血”を受け継いでいるからなのか、新しい船に心が踊ってしまう。
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