第一話 異世界《ミッドガルニア》は突然に 01

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第一話 異世界《ミッドガルニア》は突然に 01

 小降りの雨の中、若林日和(ワカバヤシ ヒヨリ)は両手に限度一杯ぎっしり詰まったビニール袋を持って、二つ結びのおさげ髪が上下とせわしなく揺れ動くほどに走っていた。  本日は日曜日。朝はお出かけにピッタリの快晴だったのに、昼過ぎてからは空模様が怪しくなり、曇天を割くように一筋の閃光が奔ると雷鳴が響いて、六月に相応しい生温い雨が降ってきたのだ。  出掛ける前に見た天気予報では、降水確率が十パーセントだったのにと恨めしく思う。  先月の十五歳の誕生日に買って貰ったよそ行きの洒落た服を着て、本土まで買い物へ来たのに雨で濡れてしまい、少し損した気持ちが心を覆ったが、ヒヨリは多種多様な食材や調味料が詰まっているビニール袋の中身を確認すると若干気が晴れた。  知り合いから買い物を頼まれ、その目的は成し遂げていたので、あとは帰るだけだ。  両手が塞がっているので傘をさせない。どこかで雨宿りをするべきだが、連絡船の出航時間が迫っていたのである。  ヒヨリの家は本土から連絡船で二十分ほどで着く離島(島名は飛芽島)で、県内で唯一の村となっている。つまり田舎なのだ。その為、船の便数も少ない。     
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