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封印が解けて、自分の力が戻った次の日の朝。
玄関を出たところで、俺は溜息をついた。
いつもと変わらない空、道、庭。けれど、俺だけは変わってしまった。
昨日の朝までは、普通の少年、だったのになあ………。
溜息と共に門を開ければ、向かいの家のお婆さんの姿が目に入った。
あれ? 入院してるって聞いてたけど………。
「おはようございま~す」
疑問を持ったものの、こっちに向かって歩いてくるお婆さんに朝の挨拶をした。俺を見たお婆さんは立ち止まり、会釈をしてくれた。そして………。
「………え?」
そのまま、すうっと消えてしまったのだ。
「で、出たあっっっ」
回れ右をして、家に駆け込む。
「おば、おばっっ。向かいっ、おばあっっ」
ちょうど玄関にいたミツ兄にしがみつけば、不審者を見るような目つきをされてしまった。
「はあ?」
「お化けだよっ。向かいのお婆さん、お化けになっちゃったあっっ」
ミツ兄は玄関の扉を開けて、外へ身を乗り出した。その背中にしがみつき、隙間から外を眺めれば、向かいの家から家族の人が出てくるところだった。みんなで車に乗り込んでいく。
「危篤だって言ってたからな。今朝、亡くなったんだろう。………って、いつまでしがみついてる気?」
重い、と振り落とされた。尻餅をつく。
「痛っ☆」
「まったく……。幽霊視ただけでパニくるなよな」
「だってえっ。くっきりはっきり見えたのに、消えたんだぞおっ。むちゃくちゃ怖いじゃんかっっ」
「………アホ。それくらいで驚いてたら、身がもたないぞ。学校なんて幽霊の巣みたいなモノじゃないか」
「うそおおっっ」
「信じられないなら、自分の目で確かめてみろよ」
「嫌だよ、そんなのっ。俺、幽霊嫌いなんだからっっ」
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