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「何だったんだ、今の………?」
顔を上げても、視界には、学校に入る生徒だけしか入ってこなかった。そのことがブルーになっていた俺の気分を向上させた。ホッとしながら、周囲を見渡す。
「良かった、何もいない………」
「何が良かったんだ?」
「うわっ」
ドンッと背中を叩かれ、よろめいた。後ろを見れば、立原が立っていた。
「おっは~♪ もう大丈夫なのか?」
死語の挨拶と共に言われた言葉に、首を傾げた。
「ん? 何が?」
「何がってねえ~~………。お前、昨日熱があったじゃないかっ」
あ。
言われて、思い出した。
熱が出たのは力の影響なんだけど、俺自身、力のことをよく理解していないから、立原にどう説明していいのかわからない。(もっとも、親からは、力のことは秘密、と口止めされているんだけど)
適当にごまかすことにした。
「ああ、うん。それ、寝たら治ったんだ。若さってヤツ?」
「バカさの間違いじゃないのか」
「☆ このヤロぉっ」
立原に向かって手を振り上げた瞬間、悪寒に包まれた。なんだ? と疑問を発するより先に、肉体が反応してしまった。悪寒の源、左横を向く。
「あ…………」
五十嵐先生の姿が目に止まる。同時、全身の毛穴が収縮した。
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