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* * * * *
私は闇の中を歩いている。
―憎い……憎い……憎い………
―悔しい……悔しい……悔しい……
身の内に渦巻く怨憎の闇に、平素の穏やかな気持ちは浸食された。
―許さない……許さない……許さない……
―殺してやる……殺してやる……殺してやる……
浅ましい感情だと思っていた、憎悪に殺意。闇の中を歩んでいる今、それらを抱えていることに、罪の意識は欠片もない。
「……早く……殺したい……」
呟いて、小さく笑う。
「大切なものを、奪われたんだもの。当然よね……」
クスクス笑う。つられるように、周囲の闇もクスクス笑う。
―フフフ……
―普通に殺したんじゃ面白くないよなあっ
―アハハハハ……
―そうそう! 大事なものを奪われるってわかったら、泣いて、土下座して、みっともなく許しを請うわよっ
―謝ってもらっても、赦さないけどなあっ。ギャヒャヒャヒャッ
下品な嗤いに一瞬鼻白んだが、謝ってもらっても赦さない、という考え方には共感できた。哂う。
「……そうね……フフフ……。滑稽でしょうね……」
目に入れても痛くない、大事な大事なお孫さん。目の前で八つ裂きにされたら、貴方はどんな顔をするかしら。
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