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哂いながら、私は暗闇を歩く。
私と両親の人生を台無しにした男。彼への復讐は、今日、完結するだろう。
朝の光が目の前に現れる。
……さて、事の成就まで、一旦五十嵐涼子に戻ろう……。
* * * * *
目を開けた。陽光がある明るい世界。地面に立つ、自分の脚が目に入る。次いで天を仰げば、雲一つない青空。ここはどこだ、と思う感覚はない。ゆっくりと首を回して周囲を見渡し、目に入った校舎のある方向へ歩いていく。
「おはようございま~す」
通りすがりの生徒が私に声をかけてきた。
「おはよう」
笑顔の仮面をまとい、挨拶を返す。続けて別の生徒も、私を追い抜きながら声をかけてくる。
「先生、おはようっ」
「おはよう」
ごく自然な朝の光景だが、闇の一部と成り果ててしまった私には息苦しく、笑顔の仮面を投げ捨てたくなった。堪えるように目を細め、内心で考える。早く職員室に行き、自分の席で静かに事の成り行きを見守ろう。
足早に歩を進めようとしたその時、前方にいた二人の男子生徒に目が止まり、足が止まった。
あの二人は、受け持ちクラスの………
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