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承前
目の前にあったのは、鋼鉄の門扉で遮られた白い外壁の硬質な建物。
大人になったなら、もう一度あの建物に出会えるだろう。
積み上げてきた想いの塊がガラガラと砕け、その頂点にいた私は瓦礫に飲まれる。
嘘でしょうっ?!
悲鳴と共に絶望の奈落に落ちた私は、眩暈を感じ、門扉にしがみつく。
……ああ……、そんな…………。
手のひらに伝わる冷たい感触が、目の前の建物が幻ではないことを私に教え、それがさらに私を奈落へ突き落とした。
もう生家に戻れないことはわかっていた。けれど、二度とあの建物を見ることができないとは考えてもいなかった。
私の、そして両親の人生は、一体何のためにあったんだろう……。
空虚になった私の心。絶望から小さな怒りが芽を出し始めた。
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