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「あの妖怪にシロがいることはバレないように家を出ないとな……」
母はさっき届いた荷物をリビングで開封していることだろう。出掛けるなら今がチャンスだ。一人気合を入れているシロを腕に抱えて立ち上がる。
「シロ、どきどきするー」
「あんまり声を出さないようにな。妖怪に見つかると食べられるんだぞー」
「妖怪、怖い……」
ぷるぷると震えている。怯える姿もかわ……いかんいかん。調子に乗りすぎた。
「あはは、冗談だよ」
「むぅー」
鍵を開け、廊下に出た。足音を立てないように、忍び足でそろそろと階段を降りる。母は段ボール箱の開封に苦戦しているのか、何で開かないのとか訴えてやるとかなんとか聞こえる。訴えるの好きだなおい。
母が気を取られていたおかげで、どうにかバレずに玄関まで来れた。行ってきますと一言だけ告げ、そそくさと家を出た。
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