じょしつき、

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じょしつき、

「…………あぢぃ」  蝉がしげしげと鳴く昼下がり。八月も半ばに差し掛かっており、都市部では真夏日を観測するほどになってきた。それは、都市部からやや外れたこの住宅地も例外ではない。  俺の部屋は三階西向きの超ホットスポットにもかかわらず、エアコンがない。そのせいで、今も扇風機とにらめっこを続けている状態だ。この蒸し暑さにこんな貧弱な扇風機一台では、焼け石に水でしかない。  親はもったいないからと言うが、可愛い息子が熱中症になってもいいというのか。大体お金が理由なら、なんで妹の部屋はエアコン付きなんだ? 「そうだ妹は……」  親に愛されていないのでは、という思考は扇風機の強風で吹き飛ばし、部屋を出るべく立ち上がった。長い間風に当たりすぎたせいか少し頭がふらつき、足取りがおぼつかない。  廊下に出て、向かいの桃をモチーフにしたプレートが掛かった部屋の扉を開けた。中に人の気配はない。あいつ、まだ帰ってきてないのか。  俺の妹は絶賛家出中である。今までに何度も家出を繰り返してはいるが、今回は今日でもう三日目になる。長い。  いくら度重なる家出で感覚が鈍ってきているとはいえ、これは流石に心配になるレベルである。どこかで事故にあったりしてないだろうか。 「まあ、どうせ友達の家にでも泊まってるだろうし、大丈夫だろ」  よぎった不安を払拭するようにつぶやく。あいつのことだ、ひょっこり帰ってくるだろう。  涼むために二階に降りようと踵を九十度変え、階段へと向かった。
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