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奏風side
当日
クジをひくと『春ー20』と書かれていた。
春・夏・秋・冬でそれぞれ30組ある。
生徒人数が多いから、コースを4つにしてそれぞれで競うことになったらしい。
春コースで1位、夏コースで1位という感じ。
出番までの待ち時間は、他の人達と交流会。
お喋りしたり、ちょっとしたゲームをしたり。
今、同じ『春ー20』を持ってる人を探している。全生徒バラバラになって探し始め、数分で澪里君、京斗君ともはぐれてしまった。
それからいろんな人達に聞かれて皆違って。
見つかるだろうか。
学年もクラスも違う、この中から同じ番号を持ってる人を。
「………ハァ」
だんだん、行き交う人の匂いやザワついた音に酔ってしまう。それに、周りは知らない人だらけで何だか怖い。こんな大勢の中、1人なる経験がなかったから。
「………ゥ」
一旦隅に行こう。落ち着いたら探そう。
運悪く、香水きつい誰かに話しかけられてしまった。
「ねぇ〜、『夏ー12』〜?」
「…えっと…ち…違います…」
「え〜、また違うの〜。」
そのまま彼は去っていった。けど匂いがやばい。気持ち悪い。
早く、早く見つけてここから出たい。
勝手に外に出ていいのか分からないから、誰かに言って出た方が…
そんな事を思っても、全く見つからない。
そして時間が経つにつれ気持ち悪さも不安も増し、目頭が熱くなった。
誰か…助けて…
「あれ、奏風君?大丈夫?顔色悪いね。大丈夫?」
優しい、知ってる声。
気づけば横抱きにされていた。
急に抱き上げられて驚き、しがみついてしまう。
「ふふ。驚いちゃったね。ごめんね。怖かったら掴まってて。落ち着けるところまで移動するからね」
優しく言われ、気付けば簡易ベッドの置かれた部屋にいた。
「顔色悪いね。ここに座って。」
座るのを促されて座って顔を上げると、助けてくれたのは
「さ…かき先…輩…?」
総隊長の榊先輩だった。
どっと不安だったのが無くなって安心した。知ってる人に助けられて。
安心したのも束の間、緊張がとれたのかどっと疲れが増して気持ち悪くなる。
「奏風君?」
座っているのも辛くなりズルズルと崩れていく。
「…っと!これは大丈夫じゃなさそうだね」
ゆっくり支えながら榊先輩が横にしてくれた。
そして頭を優しく撫でてくる。
気持ち悪さは治らない…けど、少し落ち着く気がする。
「……んー、さっきより顔色が悪いね。奏風君、保健室行こうか。揺れないよう気をつけるから、ね?…奏風君?」
あれ、なんでだろう、榊先輩が何を言っているのか分からなくなってきた。
意識もなんかぼんやりしてくる。
眠いな。
眠ってもいい…かな。
あれ…どこからか、焦った声が聞こえる。
誰だっけ…分からない…
「……だ…れ……」
僕の記憶はそこで途切れた。
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