晩夏の香り

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その時、彼女は突然現れた。 「水緒くん..だよね?」 彼女は長い髪を涼しげにさらりと流して、僕の隣の席に座った。 「あ、うん。えっと...万智さん、だよね。二組の。」 万智 巴。隣のクラスの生徒で、水泳部。僕が知っていたのはそのくらいだった。 あまり交流のある仲ではなかったが、図書館で居合わせたという偶然から声をかけてきたようだった。 「水緒くん、受験勉強?」 「うん。万智さんも?」 「うん。」 口を交わしたのは、そのくらいだった気がする。 正直なところ、あんまり覚えていない。 万智さんは、隣の席で勉強をしていた。時折、膝をさすっていた。
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