逆襲のアルテミス

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14、5歳の白い肌をした華奢な少女だ。薄汚れた肌着しか着ていないその少女は酷く怯えきった表情で立ち尽くしている。少女の目に映っているのは、見せしめにされている自分をイヤらしい眼差しで眺める男達。どうやらその中の片端には、優雅に着席し妙にキレイなスーツを着てワイングラスを傾ける人も居るようだ。すると男共は我先にと数字を叫び始めた。 3万と叫び声が上がれば、4万と声が乗せられ、更に5万と叫び立てられればまた更に6万と声が乗せられていく。そんな穢れた喧騒が突如として静まると、小汚ない男共は一様に売人に手を差された、ワイングラスを片手にして手を挙げている1人の男を見た。 「60万」 スーツの男がそう言うと、小汚ない男共は一斉に落胆のため息を吐き下ろした。少女が静かに泣き出した事など気にも留めず、小汚ない男共は金持ちを羨むような悪態をついたり、負けた負けたと、その場を去っていったりしていく。小汚ない男共もさることながら、売人も売人で客達の悪態や商品の涙など全く気にも留めず、売買が成立した商品をさっさと別の係員に押し付け、牢獄のある地下へと向かっていった。 「60か。流石金持ちというか、処女だからって女を買うのに60も出す低俗さというか」 「良いじゃないすか、金が回れば。金を稼ぐのにルールなんか無いんすよね?」 「ハハッ・・・そうそう、よく覚えてるじゃないか。ほんと、ここの客はバカばっかだよな。・・・・・・え?」 売人は1つの牢獄の前で立ち尽くした。何故ならそこに居るはずの商品の女が居ないからだ。売人は向かいの牢、そしてその隣の牢も見ていくがすでに人気は無くなっていた。 「・・・おい、どうなってんだよ!脱獄しやがった!くそ、見張りはどうしたんだよ。あのマヌケ」 「アニキ!」 売人の手下がまた別の1つの牢の前で声を上げた。何事かと駆け寄り、その牢の中を見てみると、その鍵のかけられた牢にはすっかり伸びている見張りが居た。 「デイス、裏口見てこい!」
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