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「うぃっす」
その手下が走り出した先には、裏口への扉がある。その扉の先は下水道に続いていて、それは売人達がいざという時の逃げ道に使ったり、裏取引での輸送ルートになっていたりするものだ。そしてその下水道を抜けた先に彼女、ルアは居た。いとも簡単に牢の鍵を開けた男、ノイル、更に同じように捕らわれていた少女達と共に。外の空気、朝日の明るさ、ルアは目一杯深呼吸した。
「さて、ここまで来れば大丈夫だろうよ」
「てめえらっ」
「げっ何でだよ、下水道のどこを出るかなんて分からねぇはずだ」
「は?マヌケ、売られる女共の足を見ろよ。牢の中からずっと土だらけだ」
「くっそ・・・まじか」
「丸腰の女共が脱獄なんて出来ない。てめえは一体何者だ?」
「俺か?へへ、俺の名はノイル。人にはとりあえず賞金稼ぎで通ってる」
「とりあえずだ?てことは何でもねぇただの雑魚ってこった」
売人の手下、デイスは素早くジャケットを払い、脇に挿しているピストルに手を伸ばす。すると全く同じタイミングでノイルもシワだらけのジャケットの内側に手を伸ばした。2人のジャケットが風になびく。西部劇さながらの早撃ち対決かのように。しかしデイスがピストルの銃口をノイルへ向けたと同時に、ノイルはボール状の銀光りするものを、デイスの頭上へと投げた。ルア、そして少女達は一様にどこを狙っているのかと呆気に取られた。
「手を放せ」
銀色のボールはデイスの頭上を通り過ぎていく。少女達がそれを目で追う最中、そのボールは耳の奥を突くような甲高い機械音を鳴らした。直後、デイスは宙返りした。何も無いその場所で、人間の体が浮き上がったのだ。ピストルを持つ右手が先行し、まるで誰かに投げ飛ばされるように背後へ頭から落ちたデイスを、ノイルは嘲笑った。
「だから言っただろ。超磁石に引き寄せられるピストルから手を放さないと、体が持っていかれるってさ、へへ」
「くそ、超磁石かよ、雑魚が」
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