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起き上がり始めたデイスに、すかさずノイルは殴りかかった。どうやら西部劇ではなく、泥臭い殴り合いだったようだ。のしかかったのも束の間、ノイルは蹴り飛ばされ、2人は立ち上がってから再び殴り合った。体格ではデイスが勝っている。だがノイルの動きは明らかに素人のものではなかった。数発のパンチでデイスはよろめき、その後の顎への1発でその体は再び地面に伏した。
「へっへーい。雑魚にやられるお前は何だっつーの。ふう。この先に俺の知り合いが居る集落がある。そこに行きゃ安全だ」
ノイルは雑草の中に落ちた超磁石とピストルを拾い上げ、ルアと少女達に歩み寄る為に伸びているデイスを跨いでいく。ルアはふとノイルの背後にある下水道への入口を見る。捕まって武器も服も奪われたままだ。そんな心配をした時、そのまん丸い入口からピストルを持った売人が出てきた。
「ノイル後ろ!」
ノイルが振り返ったと同時だった。そんな一瞬では何も出来ないと、誰もが理解していた。銃声と共に、ノイルは倒れ込んだ。
「ノイル!」
「つぅ・・・くそ」
「勝手に商品逃がすとか、マジ調子に乗ってんじゃねぇぞヒーロー気取りが」
辛うじて急所を外したノイルだが、肩から血を流しているその姿では戦えない事は明白で、売人が新たに3人の男を連れて近付いてくると、少女達は逃げられない事を悟ってか、泣き出したり、その場に座り込んだりしていく。
「女共!逃げるなら殺すからな?」
「ヘルっ!」
ルアは叫んだ。売人達は何の事かとルアを見つめた。すると直後、下水道への入口を隠すように隆起した丘を飛び越え、ヘルはやってきた。
「ええっ!!」
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