毒の花

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鈴蘭の猛毒を知った時、たまたま活けていた鈴蘭が怖くなった。だが、策略を持って摘み取ってきたトリカブトらしき植物を、冷静に見つめる自分がいる。この変化は何なのか。初めて殺意に気づいた時と、数日後とでは明らかに気持ちが違っている。死ぬなら本当に死んでしまえ。そう開き直ってしまえる自分を、それほど恐ろしいとは思わないのだ。  隆子は決めた。この植物を夫と一緒に自分も食べるのだ、と。  その植物を五センチ幅に切り、油をしいたフライパンに入れる。ジューッという耳に心地よい音を立て、その植物はすぐにしんなりとなった。根から抽出した液入りのだし汁を半カップほど注ぐ。酒、醤油、味醂を加え、調味料がなじんだところで溶き玉子を加え、フライパンに蓋をして蒸し焼きにした。  皿に盛りつける。玉子の黄色と、その植物の緑色が殺意を軸にクロスしている。  ロシアンルーレットだ。結局その植物が毒草なのかわからない。二輪草は葉が指で簡単に千切れるそうなのだが、ポケットから出した際には萎えており、確認できなかった。隆子はその植物の玉子とじにラップをかけた。  午後七時、珍しく真が帰宅した。 「ただいま」  いつもより明るい声だ。早退でもして、子供の顔でも見てきたのか。 「おかえりなさい。今日は早かったのね」 「毎日毎日、会議や接待ばかりじゃないさ」 「そうよね、夕飯食べるでしょ」
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