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―私には今も忘れられない日がある。  6月。梅雨の時期にしては珍しい快晴。 白を基調とした部屋の鏡の前、 純白のドレスを身にまとった彼女は振り返ってはにかんだ笑みを浮かべる。 「似合う?」 10年間、学生時代からの姿を見ている私にはとてもまぶしくて、目を細めた。 とても、綺麗だよ。結衣。 「香苗、ありがとう」 満足そうな笑み。 昔から彼女の笑みには人を引き付けるものがあった。 丸いラインをえがく顔にどんぐりのような瞳、 これまた丸い鼻に、ぽってりとしているが小さな唇。 はにかむとふっくらとした頬にはくぼみが浮かぶのだ。 きっと私でなくとも夢中になるだろうと確信できる。 「私ね、今日…。香苗、きてくれないと思ったの」 彼女の言葉で我に返ると目線をあわせ、崩れた姿勢を正しながら どうしてそう思ったのかわからない、と首をかしげる。 「あの時、いきなりだったし…。言いすぎちゃったなって」 彼女はしばしば人の気持ちに対して気にしすぎるきらいがある。 とても、些細なものなのに。
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