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初めて会話をしたのは、今と同じ六月、じめじめと暑い日だった。
体育の授業のあと、汗で濡れた体育着をまさに着替えようとした時だ。
斜め向かいの席、日よけのためか夏でも長いズボンを履いていた女生徒が
ズボンを太ももの上までたくしあげ、白く長い脚を惜しげもなくさらけ出していた。
激しい運動のせいか、白い肌はかすかに桃色に染まっていて、
私は着替えることすら忘れてしまった。
「…えっち」
いつから気が付いていたんだろう。
いつの間にかこちらを見ていた女生徒ははにかんだ笑いを浮かべているのだ。
この、同級生こそが結衣だ。
こんな出会いだったが、彼女は意外にも私の価値観に理解を示していた。
同級生たちが他校の男子生徒の話でいろめきだつ中、
私は何故恋愛対象は異性でなければいけないのか、と思っていた。
「生殖行為は異性とでなければできないから」
これが私の中の答えだが、それが一番の愛情であるなんて嘘だと叫びたい気分だった。
きっと誰にも理解されないと思っていた。
「私も同じ。誰を好きになってもいいと思うし、性行為が必要ない恋愛もあると思う。」
驚いた。否定されると思っていた。
「それにね、私は…心を許せる人と一生を過ごしたいと思ってるから。」
ああ、私も同じだ…。私も、彼女と同じ気持ちを持っている!
「それが、同性でも異性でも、もしかしたら人間じゃないかもしれない。それでも心が通じていればいいと思うの。」
言い終えて、彼女ははにかんだ笑みを浮かべた。
私はその時恋に落ちた。ずっと彼女とともにいたい、強く思ったのだ。
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