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しかし、現実というのはすべてが自分の思う通りにはいかない。
それからお互いに社会人になってからも、
月に1度会い、週に3回は電話をする日々をおくっていた。
ある時だった。
今からちょうど半年前の食事の場。
彼女から唐突に告げられた言葉に、
私の身体は内側から瞬時に凍ってしまった。
「私、結婚することになったの」
いつ?どこで?誰と?
私は混乱した。ずっと、ずっと一緒だったはずの彼女からいきなり突き放されたような。
突然地面がなくなったかのような浮遊感。
どうして?
「香苗、ごめんね。私は子供が欲しいの」
それは、平凡で、普通で、当たり前で、幸せな理由だった。
私の目の前にいた彼女がぼやけて見えた。距離感が分からなくなってしまった。
私と彼女は同じだったのに。
「あのね、香苗?人間は成長するのよ。」
「人間だから、意見が変わることもある。
私も、たくさんの人と出会って、考え方が少し変わったの。」
そんなこと、認めたくなかった。震える声ですがるように言ったが、
彼女は、眉根をよせて、今度は少しだけ寂しそうに笑った。
「ごめんね。」
本当に些細な食い違い。彼女は変わったのだ。
些細な積み重ねの後に。
私は――――
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