あの日

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 顔を上げると、周りの客がみんな同じ方向を向いていた。何かを眺めているようだ。奇妙に思い背伸びして見ようとするが、遠くてよく分からない。  不思議に思いつつ、再び読書に集中しようとするが、どうも集中できない。皆がしきりに一方を確認するせいだ。  私の知らないところで何かが起こっている。そう確信させるように、周囲の緊張感は段々と高まっていく。普段の雰囲気が嘘のようだ。店内放送の明るさだけが、とことん空回りしているように思われた。
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