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「何でも聞きますよ。僕で良ければ……」
情事が終わった後も、そんな言葉をかけるくらいナナメは出来た青年で、脆く弱い三十路男はその行為にベタベタに甘え、その日あった事を全て話して醜態を曝す。
一体どっちが年上なのだろうかと我に返る立脇だったが、そのナナメの包容力には微量の毒が混ざっていて、止められなくなってしまった。
ナナメは優しい。只管、悦楽を追求し甘やかし、どろどろに溶けるまで体を愛してくれる。
懐が深くて、こちらが甘やかして欲しいと思っている時程、その本領を発揮してくれる。
ただ一つ、どんなに甘やかしても彼は泊まって行く事がなかった。
「もう帰るの? たまには泊まって行ったらいいのに。ホテル代なら、俺が……」
「ごめんなさい。僕、誰かと一緒に寝れないんです。また誘って下さい」
十分なピロートークをした後は、毎回そうやって先にホテルを出て行ってしまう。
置いて行かれると言う寂しさは、何度味わっても薄れる事は無かった。
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