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〉会いたいんだけど。
立脇は短いラインをナナメに送った。
すぐに既読が付いて、大丈夫です、と返事があった。
立脇は横川にもすまん、と一言ラインで断って、いつもの行きつけのホテルへと向かう。
「タテさん、最近連絡無いから、飽きられたかと思っちゃいました」
「ごめんね……」
「何か嫌な事でもありましたか? 顔が暗いですよ?」
「あ、あのね……ナナメくん」
「はい」
心配げに顔を覗きこまれて、また涙腺が緩みそうになった立脇は、先にシャワーに行ってくると逃げを打った。
噛み殺しても噛み殺しても、どう聞けばいいのかなんて分からない。
もういっそ聞かないままの方が関係を壊す事もないし、自分が我慢すればそれで良い話じゃないのか? と言う考えが脳裏に浮かぶ。
触れられなくなるくらいなら、我慢すれば良いと思ってた――――。
シャワーの下で打ちひしがれながら、立脇の脳裏には横川の科白が過る。
好きな人の腕の中で一緒に寝て、微睡んで、だらしない寝起きの顔を見て、幸せだと感じる。
乙女脳だと言われてもそれをずっと我慢する事は、立脇にとって辛い選択だ。
鍵のかかった狭い部屋の中でしか恋人でいられない、往来で手を繋ぐ事も、キスも、人前で彼氏を自慢する事も出来ないのに、プライベートな空間でまで我慢するのは嫌だった。
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