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「タテさん……一緒に入って良い?」
「……え?」
裸体のナナメがシャワールームに姿を現して、驚いた立脇は危うく後ろにすっ転ぶ所だった。
「うわっ!」
「ちょ、あっぶなっ……」
逞しい腕が立脇の細い腰を掬う様に抱いた。
ナナメは決して体格がいい方ではないけれど、体は綺麗に締まっている。
彼は引越し屋のバイトとか道路工事の手伝いとか、肉体労働のバイトが多いからだと恥ずかしげに言っていた。
「今日のタテさんは、ちょっと様子がオカシイね?」
額にそっと口付けられて、三十路になる男がグダグダと悩むのもどうなんだと、立脇は意を決して口を開く。
「お、俺の名前は立脇……立脇尤利って言うんだ。仕事は雑誌編集、歳は……知ってるか……後は、血液型は……」
「タテさん? どうしたの、急に……」
「ナ、ナナメくんの事が知りたい。き、君の事が好きだから、もっと沢山知りたいんだ。だ、だから先に自分の事を言わないとなって……思っ……」
「ぷはっ……あははっ、全裸で風呂で告られたのは初めてだなぁ」
「あ、ごめん……つい、勢い余って……」
「タテさんのそう言う所、僕は好きよ。年上なのに可愛いって言うか……」
「か、可愛い……?」
「僕は七目明人。七つの目に明るい人で、七目明人だよ」
名前が違っていれば、なんて甘い妄想はこの時点で消え失せた。
立脇は目の前にあるしなやかな筋肉に覆われた胸板をギュッと抱きしめる。
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