31人が本棚に入れています
本棚に追加
「タテさんは、何で一緒に寝てくれないの? って聞きたいんだよね?」
「……え?」
「良く言われる。僕、こう言う事しても絶対に泊まった事ないから、朝まで一緒にいて欲しいって、何で泊まってくれないのか? って……」
「……俺は、多分その理由を知ってる。って言うか、今日知ったけど……多分それが理由だって思ってる」
「あぁ……そういや雑誌の取材、受けたな。それもう記事になってんの?」
「校正、俺がやったんだ……もうすぐ刊行だよ」
「あー、なるほど」
そう言ったナナメは笑って「上がろ」と手を引いてくれる。
ずっとシャワー下でお湯を浴びていた立脇の体は、ほんのり赤らむ程に火照っていて、ナナメは部屋に備え付けてある小さな冷蔵庫からビールを二本取り出し、一本をこちらへと渡してくれた。
「まず、一緒に寝るんだって思うと眠れないんだよね……。朝起きたら、ってどうしても思っちゃうし……」
ベッドサイドに腰掛けた立脇の隣に座ったナナメは、両手で缶ビールを持ったまま俯きがちに喋り出した。
「眠ってしまうと今度は目を覚ましたくないと思ってるみたいで、眠りが異常に深いんだ。そんで部屋には十五個の目覚まし置いてるんだけどね」
「十五個……」
「前に酔っぱらって寝ちゃって、起きた時に友達が横で寝ててさ……。僕ちょっとパニック起こしかけて……自分より先に起きてくれないと、寝顔見るのが怖いんだよ……。面倒臭いでしょ?」
ナナメは困った様に笑って「だから泊まらない」と付け加えた。
最初のコメントを投稿しよう!