31人が本棚に入れています
本棚に追加
ホテルの目覚ましやモーニングサービス程度では起きれないし、相手に絶対に先に起きてくれなんて頼むのも面倒だし、そもそも一緒に寝たいと思った事がないと言い切られてしまった。
「お、俺はさ……」
「うん?」
「前に話した通り、元彼がネコなのを全然知らなくてタチやらせちゃってて……嫌な事を強要してたんだって思うと、今でもキッツイなって思うんだけど……」
「それはタテさんだけのせいじゃないでしょ? 相手だって言わなかったんだし……」
「一緒に寝るって、俺の中では凄く幸せな事なんだよ。俺らみたいなヤツは往来で堂々と出来るわけでもないし、セ、セックスだけが幸せな訳じゃないだろ……?」
「うん、まぁね。僕にとっては怖い事ではあるけど、タテさんが言ってる事も理解出来るよ」
「俺はっ! 君を、幸せにしたいっ!」
言葉足らずな小学生の様に、そう言い放った立脇に、ナナメはキョトンと目を瞠る。
三十路にもなってなんて無様な告白だろうか。
仮にも雑誌編集をやっている男の語彙とは思えない、幼く拙いその告白は、誰より立脇自身が呆れてものが言えない。
「うはっ、何か凄いな……。僕、この事誰にも話した事ないんだ。一緒に眠るなんて当たり前な事が出来ないなんて、説明すんの難しいじゃない? さっきも言ったけど重い話でしょ? だから、誰かに告白されても応える事が出来なかったし、自分からなんてもっと出来なくて……」
「お、俺は……明人と一緒にいたい。絶対、約束守るし、朝も俺が起こしてあげるよ?」
「タテさんを掲示板で見つけた時にね……。自分がナナメだから真直ぐな人なのかなって、ただそれだけで選んじゃったけど、選んでよかった」
タテさんがヨコさんに浮気されて、良かった――――。
最初のコメントを投稿しよう!