タテヨコナナメの恋愛事情。

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 自分の品位を下げて、汚されて壊れてしまいたくなる程の後悔が、立脇を不埒な行動へと走らせた。  横川と付き合い出してから一切覗いた事のなかった掲示板を開いて、一晩の相手を求める。  〉ネコです。三十路です。普通にしてくれる人がいいです。  こんな歳になって特別な刺激を求めちゃいない。  ただ抱き合って、温もりを感じて眠りたかった。  立脇は一人寝が嫌いで淋しがりな自分を良く知っている。  それに反応したのは“ナナメ”と言うハンドルネームの若い男だった。  会社じゃ“タテヨココンビ”なんて呼ばれて、お笑い芸人みたいだなと二人で笑っていたのに、慰めを求めて書きこんだらナナメなんて、この世は上手く出来過ぎている。  〉まだ学生ですけど、いいですか?  時間も遅く、回りくどい事は抜きにして、さっさと他の男に抱かれてしまいたかった立脇は、即座にそのナナメと名乗った男と待ち合わせ、ホテルへと直行した。  ナナメはあどけない顔をした青年で、黒髪が少し傷んでいる。  ズボラとまでは行かないが、お洒落に気を遣うリア充とは言い難い風貌だった。  人当たりの良いナナメは、大人しそうな顔の割に喋るのは上手いし、セックスは丁寧で優しい上に肉欲をオープンにして憚らない。  素直にしたい、気持ち良い、して欲しい、と言葉にしてくれると立脇はそれだけで安堵出来た。  最初の晩、抱かれながら涙を零した立脇に、ナナメは酷く優しくしてくれた。
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